直前の雑記を読んだ友人から、
「そんなフラットトルクなエンジンで「SPORT」の名前を冠するのはどうよ?」
てな話題をいただきまして。
たしかにスポーツカーというのは、高回転高出力型のエンジンを搭載していると相場が決まっています。
(アメ車のコーヴェットのような例外もありますが…)
ですから、わがスポルト20のようにフラットトルク型のエンジンでSPORTっていうのはしっくりこない、と意見もまあ納得できます。
でも、スポーツカーのエンジンが高回転型になったのはなぜでしょう?
私はそれを「最高速度の呪縛」ではないかと思っています。
スポーツカーはセダンよりもカッコよく、そして性能もよくなければならない、という不文律があります。
デザインが流麗なのはまあなんとでもなるとして、ですね、性能とはなにか。
コーナリング性能、加速性能、そして最高速。(もちろんソレに見合ったブレーキも)
このすべてにおいて、(同クラスの)セダンより上をいかないといけない、というプレッシャーがあると思うのです。
この最高速が落とし穴です。
スポーツカー黎明期には、これらすべての性能において、セダンを上回るのは難しいことではありませんでした。(いや、もちろん当時のエンジニアは苦労したとおもいますが)
ところがドイツのアウトバーンをはじめとした超高速対応の交通路が、瞬く間に200Km/h以上で安定走行できるセダンを作り上げてしまいました。
そうなるとスポーツカーも商品性を上げるために、もっと最高速を上げなければなりません。
空気抵抗に打ち勝つためのデザインと、そしてエンジン。
結果としてトルクバンドは高回転域に移行し、高回転高出力型になっていった…のでは?
とまあこれは素人の思いつきですが。
そういう、スペック的なことを考えないで、スポーツカーの楽しさってなにか、と思ったりしますと。
これはですね、高回転で爆裂パワーを発揮するピーキーなエンジンを駆使してハイペースを維持する、というのは(技能としては高度ですごいものですが)楽しさとはまたちがうんじゃないかな、とか思います。
高回転かどうかなんて関係なく、「抜きたい」「加速したい」と思ってアクセルを踏んだとき、ドン、と加速するその感じ。
踏みさえすれば、どこからでも、どこまでも伸びていくっていう単純な加速感が、最も原始的な「スポーツカーの楽しさ」なんじゃないかなーとか思うわけです。
いやそりゃアレですよ?
コーナリングの楽しさとかもわかりますよ?
ステアリングに対する素直な追従性とか、コーナリング限界の高さとか、限界を超えたときの挙動特性とか、それを実現し制御できる強力でコントロールしやすいブレーキとか…わたしも走り屋みたいなことをしてイイキになっていた若い時期もありますし。
スイートスポットが狭いエンジンを使い切って速く走れたときの満足感もわかります。
でもまあ、それはほら、ある程度高度なハナシであって。
万人にわかりやすいスポーツカーの魅力ってのは、カッコと加速じゃないかなと思うわけです。
実に単純でわかりやすいです。
ファミリアのスポルト20は、まさにそこを衝いたセッティングだと思うのです。
多少高回転型にチューンされたとはいえ、所詮は実用エンジンです。たとえばホンダのDOHC−VTECのような、高回転まで突き抜ける官能はありません。
しかしそのフラットトルク特性の2000ccエンジンを軽量ボディに乗せたこのクルマは、エンジンの回転数を選ばすに「どこからでも踏みさえすりゃ加速する」という単純な楽しさを実現しています。
もちろんそのときの加速が飛びぬけて速いというわけではないです。
しかし、どこで踏んでもストレスがない加速を得られるというのは乗っていてとても楽しいわけですよ。
「上を使えばめっぽう速い」高回転高出力型エンジンに対して、「どこを使ってもそこそこ速い」フラットトルクエンジン。
どっちも劣らずに楽しいのです。運転していて楽しければ、スポーツエンジンの資格は十分だと私は思います。
(レーシングエンジンだと楽しさだけじゃだめですけどね)
また、公道での限られた範囲での加速だと、「上で伸びても届かない」ケースが結構あります。
そのときは高回転型エンジンはシフトダウンが必要です。その儀式もなかなかに楽しいものですが。
20Km/hの低速から、「加速しよう」と思って踏みさえすればドンと加速し速度を上げていくエンジンも、またよいものですよ。
もっとも、ファミリアスポルト20くらいだと、「どこからでも加速する」は実現できても、「どこまでも伸びる」は実現できてません(笑)
レッドゾーンは7000rpm程度なのですが、まあ5500rpmくらいを超えると伸びは鈍りますし、6000rpmを超えると回ってるだけって感じ。
パワーの落ち込みなどは感じませんが、トップエンドに向かって盛り上がり続けるパワー、っていうフィールではありません。
ターボなしの2000ccという限られたキャパシティで、どこまでやるかというところでしょう。
今回のスポルト20の設定は、「どこからでも踏めば加速する」を重視しているのだと思います。
日本の公道の法定速度は60Km/h。高速道路でも100Km/h。追い越しのときとかでちょっと出しすぎて120Km/hとか。
そこまでの加速なら、スポルト20はどこから踏んでも、そしてとりたてて深く踏み込まなくても、グングン加速します。
それはつまり、公道においては「どんなステージを走っていても速い気がして楽しい」ということになります。(実際に速いかどうかはまた別のハナシ)
高回転型エンジンに乗ってからコレに乗り換えると、「ああこういうのもアリだよな」とか納得します。
というわけで。私はスポルト20をとても気に入っているのです。
でも、KSR2を買ったら、それを運べる車が欲しい自分も、います(^^;
|