ROADSTER 990S(ND系) ご紹介
2023年10月15日

ROADSTER 990S
マツダ ロードスター 990S。現在の私の愛車です。2023年7月29日に納車。
(インプレッション・レビュー)


はじめに

小さいクルマが欲しくてデミオに乗っていたのですが、約5年でリアシートを一回しか使わなかったこともあり、より小さいクルマが欲しいと思っていました。
ロードスターは小さく、低く、軽く、狭い。理想的でしたが…、いかんせん2シーターだし、冬季の雪道とかだとダメかなあ…と思って半ばあきらめていたのですが。
定期点検でディーラーを訪れたら、ロードスター990Sの試乗車がありまして、ちょいと試乗して…、ああコレ買おう、となりました。
ディーラーから車道に出るときの挙動、レーンチェンジ、市街地の右左折の時点でヤラレましたね。
990Sにした理由は、ディーラーで試乗して気に入ったのが990Sだったからです。他のグレードのことは気にしませんでした。
足回りの設定がとても好みで、ロードスターはグレードによって乗り心地やスポーツ走行適正が全然違うそうなので、買うときも「試乗車と同じヤツ」という買い方。

990Sの由来は、車重が990Kgだからとのこと。衝突安全性や安全装備などが重視されるこのご時世で1トン切ってるのはちょっと変態的。エアコンもサイドエアバッグもついてますよ。
もともとND型ロードスターのベーシックグレードであるSが990Kg。
そこに専用のサスペンションチューニングでバネを強めてテンションダンパーを緩め、ブレンボのフロントブレーキと前後輪大径ブレーキディスクを装着、アルミホイールもレイズ製の鍛造品を奢り、パワステのセッティングも変えて、ECUのセッティングも少し早開け気味にしたのが990Sです。
あと、幌がネイビーブルーでオシャレ。幌がネイビーブルーでオシャレ。大事なことなので2回言いました。
ネイビーブルーの幌が、白いボディにとてもよく映えます。試乗車もこのカラーで、ひとめぼれして同じ色をオーダーしたのでした。
白いクルマは二度と買わない、と白いアテンザで洗車がすんごく大変で誓ったのですが、簡単に誓いを破ってしまいました…。

マツダの中の人によれば「Sの魅力をもっと広めたい、Sがもっと売れてほしいのだが『廉価品のベースグレードかあ…どうせ買うならもうちょっと装備充実のヤツを…』という印象を払拭できず、売れ行きイマイチだった」そうで。
そこで限定発売の990Sを出した。走るための装備を充実させて価格も上げて廉価感の払拭に成功、もんのすごく売れたらしいです990S。
(とはいえSグレードの価格はうんと安いので、Sがいっぱい売れても利益にはならんかったでしょうな。ビジネス的にはSスペシャルパッケージが売れ筋でよかったんだとは思います)

で、我が愛車となった990S。
無事楽しんでいます。ちょっと街乗りするだけで大変に楽しいです。もちろんワインディングは言わずもがな。
ボディの剛性感もオープンカーとしては十分です。そうですね、初代のNA型ロードスターと比べると巌のように硬いです。でも最新のマツダ3とかに比べると紙のように柔らかい…かも。
燃費もいいです。私はわけあって2週間に1回くらい高速道路を150Kmくらい走るせいもあるのですが、普段使いで平均燃費が19を超えるのが珍しくないです。


高速道路

デミオより短いホイールベース、軽い車重、後輪駆動…、高速道路まっすく走るのかしら、と若干の不安があったのですが、まっすぐ走ります。そりゃそうか市販車だもんなあ。
あ、まっすぐ走るには、ドライバーがまっすぐ走らせないといけません。その辺はFFロングホイール車とは違うところ。
でもまっすぐ走らせようと思えばちゃんとまっすぐ走ります。
案外直進性も高いのは、エンジンが縦置きでクランクシャフトのジャイロが効いているせいもあるのでしょうかね…。
車高が低く、空力もよいようです。大型車などに追い越されるとき、大型車が起こす風圧を受けると、車体が横側に振られるんじゃなくて沈み込むような感じがあり、この特性も高速安定性に寄与していると思います。
85Km/hと100Km/hでのレーンチェンジで若干印象が変わるのは低速特化の足回りセッティングのせいでしょうか。ゆっくり走ってるほうが安定してる感じあります。
オープンカーですし、幌も軽量化されて遮音材がなく、なんならリアウィンドウも軽量化のためにガラスが薄くなってるそうで、音は結構入ってきます。だから巡航速度は控えめです。

足回りは本当によくセッティングされていて、道路の継ぎ目などでも突き上げ感がありません。乗り心地メチャメチャいいです。
サスペンションが動く音もわかりますが、こんな柔らかいダンパーなのに一発で衝撃を減衰して上屋がフラフラしません。素晴らしい。

街乗り

長いフロントノーズで、見にくい路地の交差点なんかではちょっと気を使います。
あと、6速MTがちょっと忙しい。街乗りだと5速MTくらいのほうが使いやすいかもですね。
でもそれ以外は問題ないです。街乗りでも楽しい。
加速時のエンジン音、レーンチェンジでの挙動、なんなら交差点をひょいと曲がるだけで結構「ぬふふ」感があります。
エンジンは低回転からかなり粘り、街乗りの低回転低速走行も苦にしません。

ここでも言いますが、足回りは本当によくセッティングされています。
路面が荒れたところでも不快な乗り心地になりません。街乗り速度でもです。
センスありますよねこのセッティングした人。本当に素晴らしい。

あ、画像は街乗りじゃないです…(笑)

峠道(ワインディング)

楽しい!楽しい!楽しい!
ヒラヒラ感があります。車重の軽い、重量バランスがいい乗り物の中心に座って操っている感覚。
とてもよく動く足です。足回りが柔らかいのでそれなりにロールはしますが、KPC装置のおかげで不安感は低く。
路面のアンジュレーションを全部タイヤが舐めながら走るくせに上屋は安定しています。どんなトリックなんだ?と思うくらい良いです。
特にターンインがいい。
LSDもリアのスタビライザーもついてないから実に自然な曲がり方。
高負荷設定のクルマじゃこうはいきません。
前に遅い車がいてもがっかりしないくらいに、ゆっくりワインディングを流しても充分に楽しいのです。
ブレーキからアクセルに踏みかえて荷重が後輪に移り加速する様子も楽しい。

ただし、990Sの足回りは低速・低負荷にスイートスポットを置いているので、高負荷で走ると「ちょっとちがうね」感はあります。
直線で全開に、コーナー手前でギュッと減速して、横力を強く出して高い横Gを感じながら旋回、またはコーナー中にアクセルを大きく開けて後輪を滑らせながら脱出…、などという、いわゆるスポーツ走行的な走り方をするには、990Sの足回りはちょっと柔らかすぎます。
またパワーオーバーステアにもっていくにもLSDが無いんでいかんともしがたく。内側後輪から盛大に白煙上げてスキール音するけど前に進まないという。
ギュッと踏ん張ってグイっと曲がってドシュンと加速する、と走らせたい人には990Sは向きません。ロードスターならRSグレードがいいでしょう。なんならスバルBRZとかGR86のほうがいいかも…。
990Sは、「頑張らない」領域、手に汗握らない領域が超たのしいのです。
フワっとコーナーに入ってヒラっと曲がってスイーと抜けていく。速度は大して出していません。
低重心で軽いこのクルマの挙動は、低負荷時でもスポーツカーの物理的な素性の良さを存分に発揮していて、一次旋回・二次旋回ともに抜群の操作レスポンスを見せ、ええとつまり、楽しいのです。(語彙力)
フロントタイヤへの荷重、リアタイヤへの荷重が適正で、荷重バランスをアクセルとブレーキでコントロールしながら、ステアリングでヨーとロールをコントロールする感触、これはちょっと他に代えがたい快感。
もうちょっとタイヤのグリップが低いほうがもっと楽しそう。これは滑らせて遊ぶというのではなく、コーナリング中の横力を弱めてヒラヒラ感がもっと出るだろうなということです。
で、ヒラヒラ感はあるのに、不安感ないんですよ。すごくないですかKPC。

サイドビュー

4mを大きく切る全長(3915mm)。短いホイールベース。本当に小さい。ロードスターにはNA・NB・NC・NDと4世代あるのですが、この4世代目のND型が、全長では歴代で最も小さいです。
2ドアなのでドアが長く、こんなに小さいクルマなのに、駐車場で隣のクルマにドアをぶつけないよう気を遣うのが玉にキズ。
最低地上高は実は140mmを確保していて、案外高いんですよね。雪国でも安心(?)

オープンカーだから、オープン時とクローズ時の2通りが楽しめます。
オープン時のほうが、個人的にはカッコよく感じます。
幌がキャビン後方に綺麗に収まるようになっています。トノカバーなしで、たたむだけでこうなってくれるのいいですよね。
開閉も非常に簡単で、慣れれば5秒くらいで開閉できます。技術進歩を感じます。

ロングノーズ・ショートデッキ、コンパクトキャビンでカッコイイですねえ。
2ドア2シーターの特権ですねこの実用性無視でかっこよさしかないルックスは。

タイヤ・ホイール

990Sのタイヤは他のグレードと共通で、ADVAN・Sportの195/50R16サイズ。
16インチで50扁平、そんなに大径でも低扁平でもないですね。でもあまり他にはないサイズかな…。
そこそこスポーティなタイヤです。990Sだともうちょっとグリップ力が低いほうがバランスしそうな感じはしますが、まあスポーツカーだからコレはコレでありでしょう。

ホイールが4穴なのは車重が軽い証拠。
レイズ製の鍛造品。超軽量で、そもそも軽いロードスター標準ホイールからさらに1本800g、4本で3.2Kg軽量化。「FORGED」と鍛造品をアピールする刻印がされています。
デザインに奇抜さはなくクラシカルなロードスターに似合っています。
フロントブレーキキャリパーはブレンボ製。アルミ製で、鋳鉄製の標準品よりかなり軽量。ブレーキディスクは大径化していて重量が増えているのですがキャリパー軽量化で相殺しています。
このあたりが「廉価感」を払拭した最大のポイントでしょうね。
黒に近いダークグレーのホイール、そして敢えての黒塗装青文字のブレーキキャリパー、悪目立ちさせずにいい感じです。
この組み合わせは990Sだけなので、見る人が見ればすぐにわかります。

ブレンボのブレーキと大径ディスクは990Sの動力性能や車重や使われ方を考えると制動力の面ではオーバースペックで、おそらく標準品(S)も最大ブレーキ減速Gや制動距離は変わらんのじゃないかなと思います。
どちらであろうと最大ブレーキ時はタイヤグリップの限界が先に来てABS作動します。
ですが、このブレーキはコントロール性が素晴らしくて、微ブレーキや、ブレーキかけてからのブレーキをちょっと抜くときの感触とか、そのあたりはこのブレーキシステムの精度の高さを感じます。

フロントビュー

全幅1735mm。歴代では最も幅広。もうちょっと目つきが優しいほうが実は好み。NA型の可愛さをぜひ再現してほしい…。
近くから撮影したので画像だと遠近が強調されてますが実車はあまり迫力はなくかわいい感じがあります。
マツダエンブレム以外はメッキパーツもなく押し出し感はあまりありません。
ライトは全グレードLEDで、これはマツダで初だったそうです。軽量スポーツカーにふさわしい薄いフロントにどうしてもしたかったようです。
990SはオプションでもALHがつけられなかったのが残念。
エンジンをできるだけ低く搭載し、ボンネットがとても低く、いかにもスポーツカーの見た目。
こんなに低くしたので、衝突時の歩行者保護のために、衝突を感知するとボンネットを跳ね上げて歩行者の頭部とエンジンの間に隙間を作るような仕掛けがあります。

リアビュー

平べったいクルマだなあ、という印象が強いリアビュー。 ハイマウントストップランプがトランク先端じゃなくてキャビンのすぐ後ろにあるのは、ヨー慣性モーメントを減らすためだそうですが効果あるのかしら…。
リアフェンダーの張り出しがセクシー。
リアコンビネーションランプは、昨今のクルマには珍しく、車体より凹んでいます。これも特別な感じがあってよいです。凹んだランプはクラシカルな印象がありますね。
アンテナはラジコンのアンテナみたいなのが付いてます。これもクラシカルな印象。
エアロパーツはつけていません。標準状態のリアビューは上品で気に入っています。

マフラーの排気口がなんともクラシカル。

トランク

意外に入るトランク。2人で一泊旅行くらいなら十分以上。
剛性確保のため開口部が狭いので、大きな荷物は入りません。小さな箱に分けるなど工夫は必要です。
雪国では必須な?、灯油タンクを積んでみました。20リットルタンクが2個積めます。高さもちょうど収まる感じ。セーフ。

エンジンルーム

SKYACTIV-G1.5 P5-VPSRS。1500cc DOHC 4気筒 ミラーサイクル自然吸気エンジン。
132psを発揮するエンジン。7500rpmまで回ります。990Kgの車重には必要にして十分。
絶対的な速さは無いんですが、意外と低回転域、1500rpmくらいから十分に粘り、ずぼら運転も許容してくれます。
レスポンスやピックアップもよく、走ってて気持ちいいエンジンです。
デミオと同型ながら、鍛造のフルカウンタークランクシャフトやフライホイールの軽量化などによって高回転まで静かに軽やかに回るようになっています。
高負荷をかけても荒々しく吠え猛ったりしません。設計した人、調律した人のセンスと良識を感じます。大好きです。

そしてエンジン搭載位置。
みてください、「何が何でも絶対フロントミッドシップにしてやる」という執念を感じるほど後ろです。
前輪の中心位置より、エンジンが完全に後ろに押し込まれています。
これだからこそのコーナリングだと思います。鼻先が軽く、ヨー挙動に対する抵抗感がとても少なくてワインディングが超気持ちいいです。
なお、昨今のクルマに珍しくエンジンヘッドカバーがアルミ製なのは「磨いて楽しむ」ことができるように、だそうです。なんてバカな選択。いいぞもっとやれ。

エンジンが縦置きなので左右のスペースには比較的余裕があります。
そのスペースを生かして、このクルマのフロントサスペンションは贅沢なダブルウィッシュボーン式という凝った形式。(リアはマルチリンクでこれまたとても凝った形式)
アッパーアームがちょっと短くてストロークするとキャンバーがネガ方向になるように設定されています。
サスペンションの決め手は形式よりもセッティングだと思っていますが、ポテンシャルに優れた形式なら設定幅も大きい傾向にあるので、より煮詰めたセッティングにできます。

インテリア

スポーツカーらしくシンプルな3眼メーター。0が垂直指針となる形式。当然?タコメーターが中心にレイアウトされています。
サテンクロームメッキのリングがちょっとゴージャスなメーターパネルですが、私の身長だと、ちょうどいい姿勢と位置を取ると若干リングがフロントガラスに反射する…。黒いリングでもよかったかなあと思います。

ドアの上部に、ボディカラーが回り込んでいるのはオープンカーならではの、外と内が連続していることの演出だそうです。実車見るとこれが超オシャレですよ!
フロントフェンダーの峰から一直線にドアのこのボディカラーパーツまで色が連続していてなんとも素敵です。

990Sはオーディオがご覧のように小さい装置になります。マツダコネクトはオプションでも装着不可。だから(純正の)バックモニターも着きません。えぇ…。
なんでだろと思ったら、軽量化のために配線を省いてあるそうで。えぇ…。
配線省いてあるので、オートクルーズも(オプションでも)付きません。
あとエアコンもマニュアルです。温度設定がなくて温風冷風を自分で調整するタイプのエアコン、いまどき珍しい。

ステアリングホイールは、オートクルーズなどが付かないこともあってボタンが少ないシンプルな印象。
外周は上質なレザーで、とても手触りがいいです。サラッとしつつしっとりもしているというか。
サイズ感も絶妙で扱いやすいです。
チルトもテレスコピック機構もあるので、体格に合わせた調整が可能です。
路面の情報が伝わってきやすい、よいステアリングシステムです。

シート

オープンカーはシートの撮影が楽ですねえ。

軽量化のためにスチール製の骨を要れず糸?紐?でハンモックのように支えるようにしたシート。
背骨・腰椎というより、脇腹を支える感じ。できれば腰椎を支えてほしいのですが…。
正しいシートポジションを取らないと腰が痛くなります。
骨盤を起こして座っていれば長距離長時間でも平気なのですが、腰椎部分に何の刺激もないと、無意識的に腰椎を起こしたままでいるのが素人には結構難しい。いつの間にか腰が寝ている状態になってしまい、腰痛につながります。
レカロシートなどへの交換を考えなくもないんですが、990Sはお気楽に乗るのが味だと思っているので、フルバケシートはちょっと雰囲気が違う感じもしています。
なんか腰椎を支える補助具とかを用意しようか考えてます。

トランスミッション

シフトノブは球形でレザーでいい感触です。MTなのでシフトノブはしょっちゅう触りますから、ここの触感は大事です。
サテンクロームメッキと思われるベゼルリングは高級感ありますが、990Sなら艶消し黒とかでもよかったような気もします。

6速MTで、6速の変速比が1.000(直結)ですからかなりローギヤードでクロスしたギア比。
街乗りだと若干忙しく感じますがワインディングだと超楽しいです。
シフトの節度感もさすがFRレイアウトで(ワイヤーでなく)ロッドでギアを直接動かしてるだけあり、とてもしっかりしてシフトチェンジが快感です。
シフトストロークもちょうどいいです。

ロードスターのトランスミッションの本体はマツダ内製で、外観みるとわかるのですが補強リブがないツルンとしたミッションケースになっています。
これは側面衝突安全性の要件を満たしたままロードスターを軽くするために、左右シートを近づける必要があったため、スペースの都合で補強リブが邪魔になったからだそうです。
で、リブ無しで十分な強度と軽量化を満たすために、3次元的にケースの壁厚が変化するという、ぜったい設計が生産に怒られるであろう高度に変態的な鋳造技術が投入されているそうです。
そりゃー内製でやるしかないですわ…。

あと、地味にサイドブレーキがいい位置にあって、走行中でも操作しやすいです(普通はしないですけどね)。

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