White Paper - Magic technologies of a fanciful world.
INTRODUCTION
ようこそ。
ここで紹介するのは、あるゲームの製作者から依頼されて、魔術発動のリクツにしようと考案した設定なのですが、設定者がコンピュータ業界プログラマの親玉みたいな仕事をしているせいで、ムチャクチャ設定濃度が上がってしまい、当事者間で議論した結果、複雑すぎてゲームには使えないね、という結論に至ったものです。結局そのゲームについては、また全く違う発動のリクツを考案することにしました。つまり、この設定はゲームでは不採用設定です。
しかし、いろいろと濃い設定を考えたので、このまま捨ててしまうのもなんとなく損失のような気がして、ここにまとめる事にしました。
この設定に関しては、設定者およびゲーム製作者は著作権を──放棄する事は日本の法律では不可能なので──所有するだけとします。
ここで紹介する設定は、転載、改変、使用ともに一切の制限はありません。もちろん、全てを転載、改変、使用してもいいですし、一部分だけでもかまいません。それらの際に、作成者のサイトを紹介したり、説明したりすることは不要です。
創作に携わっている方のヒントにでもなれば幸いです。
なお、Netscape(R) Communicator 4.5 ではルビが本文(ルビ)のように見えます。Microsoft(R) Internet Explorer 4 でも同様です。しかし、Internet Explorer 5 は<RUBY>タグによる拡張をサポートしているので、きちんとルビが振られて見えます。お試しくださいませ。(Netscape社の最新ブラウザは設定者の環境にないため、確認しておりません。Sorry)
ホントはHTMLじゃなくて、練習がてらXMLで記述しようかと思ったんですが、1999年11月の段階では、マトモに対応しているXMLビューワがIE5しかないようなので今回はやめときます。
SCOPE
ここで紹介する範囲は、術の発動までの手順とリクツ、そしてそれに伴う背景設定です。術の種類や系統などは、設定を使う人にお任せします。また、説明の都合上、具体的な呪文の名前などが記述される可能性がありますが、全て単なる例だとお考え下さい。余談ですがこういう名前の事をプレースホルダといいます…ホントに余談だ。
BACKGROUND
世界背景や時代背景は特にキツク限定しません。魔術のほかに20世紀や未来レベルの科学技術が発達している世界としてもいいですし、また中世のようにわからないことは取りあえず魔術のせいというような世界でもかまいません。
魔術師がある程度いる世界でもいいですし、ほどんどいない世界でもかまいません。
人数的に、魔術師が多いようでしたら、TERMINOROGYで記述されている式行結晶の説明は修正してください。これが量産できないと大人数の魔術師という世界はできません。
その場合、式行結晶にも市場原理が働いて、より高性能なものへの進化が激しいような世界かもしれません。
BACKGROUNDとして唯一の制限は「大戦」(まあ呼び名はなんでもいいんですが)の存在と、それによる高度な魔術技法の喪失です。ありがちですが、パターンこそ至上という説もあります。
それに、原理不明の魔術や、巨大な破壊力を持った魔術を作品世界で登場させる事は奥行きを深める上でとても有効ですが、それが、ありふれて実現できるようですと、世界そのものを崩壊させてしまう可能性があるので、こんな逃げ道を用意しておいたほうがいいと思います。
TERMINOLOGY
使用する専門用語です。
- 呪文
- 呪文は魔術を記述したものです。
それはいわゆる一般的な呪文や真言のようなものかもしれませんし、あるいは魔法陣や紋章のようなものかもしれません。
魔術師に理解できる形式の文章や紋様で記述されており、そのままでは魔術は発動できません。
魔術を発動するには呪文を編換して編式を作成し、それを式行結晶に流し込む必要があります。
読み方は、正式にはスクリプトコードですが、長いので普通はコードを省略します。魔術師同士の会話では、ただ「コード」といった場合はこの呪文を指す事が多いです。漢字は呪文でも呪法でも呪式でも呪陣でもあるいは他のものでもかまいません。「呪」がいちおうそれを示す事にします。
呪文は、一応、魔術師に依存しません。十分な知識があれば、魔術師
はどんな呪文でも理解し、編換し、発動することができます。それができない場合でも、自分に合わせて呪文を書き直すことができます。
- 編式
- 呪文を編換してできるものです。この形式でないと、式行結晶が処理できません。この世界では、魔術は、魔術師が式行結晶に対して編式を叩き込むことで発動します。
編式の形式は式行結晶によって異なり、特定の式行結晶向けに編換された編式は別の式行結晶では基本的に実行できません。ただし、式行結晶にも系統があり、同系統の式行結晶ならば実行できる事も少なくありません。
読み方は、正式にはプロセスコードですが、長いので普通はコードを省略します。漢字はほぼ編式になります。いちおう「編」がそれを示す事にしますので、造語などはお任せします。
- 編換
- 呪文を編式に変換する作業です。
これをできるのは、式行結晶と契約した魔術師だけです。魔術師は式行結晶の支援を受けながら、その式行結晶向けに呪文を編換します。このため、魔術師が編換によって作り出せる編式の形式は、その魔術師が契約している式行結晶向けのものだけです。
- 式行結晶
- 特殊な石を呪的に加工したものです。この材料の産出量自体は豊富とは言えません。また、その材料から式行結晶を作り出す技術も「大戦」以降は衰退してしまっています。現在は式行結晶を生産できないわけではありませんが、量産するというレベルにはありません。
編式を実行し、実際に魔術を発動する際の触媒にもなります。このため魔術の発動速度は、式行結晶にも大きく依存します。が、魔術師側の意識の容量や、反応速度なども大きく関連してくるので、式行結晶だけで優劣が決まるわけではありません。
見た目は平たい宝石のようで、その形状から「チップ」と呼ばれる事もあります。色や形は式行結晶の系統によって様々です。このため、ある程度経験を積んだ魔術師ならば外見だけで大体どんな式行結晶なのかが判ります。
ほとんどの魔術師は契約した式行結晶を体に埋め込みます。埋め込む部位は、動きの少ない額が一般的ですが、生活や運動に支障が出ない範囲でなら、べつにどこに埋め込んでもかまいません。たとえば、手の甲なども候補かもしれません。また、まれにですが式行結晶を埋め込まない魔術師もいます。彼らはペンダントなどにして所持していますが、式行結晶とやり取りするには、接触が必要なので、魔術を発動する時にはそれを握り締めたりしなければなりませんし、やり取りの途中で手続きなく接触が切断されると魔術師も式行結晶もただではすみません。
式行結晶は魔力で駆動されます。速く駆動すればするほど魔力を消費しますが、それと引き換えに強力な術を発動することができるようになりますし、発動速度も高速になります。どの程度の速さで式行結晶を駆動できるかという尺度を駆動速度といいます。
- 式行領域
- 魔術師が自分の意識容量内で、編式の実行のために確保する領域です。
式行領域はさらに格納領域と作業領域に別れます。どちらにどのくらい割り当てるかは魔術師の判断によります。
魔術師は編式を格納領域に格納しておき、それを式行結晶に叩き込むことになります。ほとんどの編式は実行の際に、自らを展開したり、外部の状況を保存したりするための一時的な領域を要求します。この場合、編式は式行結晶に対して作業領域を要求し、式行結晶は魔術師の式行領域の中の作業領域から必要な容量を割り当てます。
十分な領域が無いと式行領域保護例外──要するにエラーです──が発生し、編式は実行できません。この例外は魔術師にかなりの衝撃を与え、場合によっては気絶したり、ショック死するかもしれません。
この容量はほとんど先天的に決まり、努力や訓練によって多少の拡張は可能ですが、倍増まではいきません。
- 魔術師
- 式行結晶と契約し、魔術を行使する人間──に限定はしませんが──です。珍しい存在ではありませんが、かといってありふれた存在でもない、というくらいの人口バランスだと仮定しています。もちろんこの仮定は使用してもしなくてもかまいません。
魔術師にはそれぞれ家系や系統があり、その系統内においては、使う呪文の表現形式──「呪文」を使うとか「紋章」を使うとか──や、契約する式行結晶などに統一性があるのが普通です。
まあ、基本的なところはざっとこんなものでしょうか。設定の濃さは「どこが基本やねん」状態かも知れませんが、でも、これが基本です。
ADVANCED TECHNOLOGIES
この節で紹介するのは、「魔術師なら普通はこの技術を知ってはいるものの、全員が使えるわけではないようなレベルの技術」です。
- 変動呪因
- 通常、呪文を編換してできた編式は、通り一遍の働きしかしません。
たとえば、「閃光」という呪文があったとしたら、それは「閃光」の機能しかありません。そこである魔術師は、この呪文を改良し、持続時間に応じて明るさを変化させるように記述しなおしました。この時、持続時間は、編式を発動する際にはじめて設定されるものです。これを変動呪因といいます。変動呪因を使うには、呪文の段階からそれを使うように記述する必要があり、それなりに高等な技術ですが、うまく記述に成功すれば、いくつもの効果を単一の編式でまかなうこともできます。
- 連環
- 編式を組み合わせて一つの大きな効果を作り出す技術です。単独の呪文を編換して編式を作るわけですが、その編式を複数組み合わせて大きな編式に仕上げることを連環といいます。こうしてできた大きな編式は応用編式と呼ばれます。どの編式とどの編式が連環できるのかとか、そういったノウハウは基本的に秘伝とされます。
また、連環そのものが、かなり魔術師に対して負荷をかけることなので、これを実現している魔術師はかなりの才能に恵まれ、さらに経験を積んだ達人です。
編換して連環することをまとめて編環するといいます。
- 複数同時稼動
- 現在発動している編式のことを稼動式といいます。
通常の魔術師は、一度に一つの編式しか発動できませんが、才能に恵まれ、特殊な訓練をし、さらにそれを許す系統の式行結晶と契約した魔術師は、同時に複数の編式を発動できます。この、同時に複数の編式を発動することを複数同時稼動といいます。これは式行結晶を作成する技術もさることながら、複数の編式の同時実行制御を行う魔術師の技量も並外れている必要があります。式行領域の容量が平均的な魔術師の2倍あるから複数同時稼動できる、という程度の甘いものではありません。この制御には、それぞれの編式が無作為に使う式行領域の確保や解放、式行結晶に対する先取制御など、様々な要因が含まれます。真の達人や天才でないと実現できないレベルの技術でしょう。
同時に実行する編式に関して特になんの関連も必要ありません。基本的にどんな組み合わせでも同時に実行できます。が、相反する効果を生み出す編式を発動した場合、結果として打ち消されてしまうことは充分に考えられます。
もちろん同じ編式を複数発動してもかまいません。たとえば、2人の敵に「火弾」を同時に狙いを付けたいような場合は、「火弾」の編式を2つ同時に発動することになるでしょう。でも「散弾」みたいなのがあったらそっちのほうが効果的かもしれませんが。
いくつ同時に発動できるか、といった制限は魔術師によって異なります。3つ同時に発動できる魔術師はほとんどいません。
- 超過駆動
- 式行結晶に大きな魔力を注ぎ込んで、限界を超えた駆動速度で式行結晶を駆動することです。
超過駆動は式行結晶の耐久性や魔術師の健康や精神状態を損なう可能性があります。特に極端な超過駆動は死と隣り合わせの非常に危険な技といえます。
超過駆動には麻薬のような習慣性があります。一度超過駆動を経験してしまうと、今までどおりの通常の駆動速度では満足できなくなり、さらなる駆動速度の向上への欲求が大きくなります。
- 分散化応用編式
- この技術は、現在でもかろうじて理論的には実現できる事が判っている、というレベルのものです。実際には、複数同時稼動ができる魔術師を3人以上必要とするという時点で、実現は困難といえます。
一人の式行領域では発動不可能な巨大な応用編式を部品化して、それぞれの部品を担当する魔術師が発動させ、全体として大きな応用編式を実行したことにする、というものです。目的の応用編式を発動させると同時に、魔術師同士の通信用の編式を複数同時稼動する必要があります。
なぜ2人ではなくて3人以上かというと、複数同時稼動するために、応用編式を発動できる式行領域は半分のみなので、魔術師2人では、一人で複数同時稼動せずに発動した場合とくらべて何らメリットがないからです。
魔術師の優秀さなどもさる事ながら、よほどの組織力と、不屈の研究精神、さらにこれを必要とする局面にまで追いつめられた状況がないと、まず目にする事はできないでしょう。
TRANSCEND TECHNOLOGIES
ここに紹介するのは、「大戦」以前は存在し、運用されていましたが、現在は実現不可能になっている技術です。
- 複合化式行結晶
- 通常、一人の魔術師は一つの式行結晶と契約します。
しかし、「大戦」以前は一人の魔術師が複数の式行結晶と契約し、また同時にそれらの式行結晶に対して編式を叩き込むことができました。この場合、魔術師は複数の式行結晶を体に埋め込むことになります。この技術を複合化式行結晶といいました。極めて高度な技術で、現在では理論も失われています。
複数同時稼動と複合化式行結晶は元々は違う技術ですが、複合化式行結晶は複数同時稼動の効率の向上のために開発された技術でした。このため、複合化式行結晶を持つ魔術師は例外なく複数同時稼動の能力もありました。
複合化式行結晶の制限は、同じ種類の式行結晶以外は同時に契約できない、というもので、厳密には、対称型複合化式行結晶といいます。
- 仮想式行領域
- 複数同時稼動の同時発動数を増やしていく上で問題になったのが、式行領域の狭さでした。どんなに才能に恵まれていても、容量的に平均の3倍を上回ることはほとんどありませんでした。これを解決するために開発された技術が、仮想式行領域です。仮想式行領域では、実際の式行領域をはるかに上回る容量の式行領域を仮想的に実現しました。
魔術師の意識に近い反応を示す特殊な物質を埋め込み、それを補助的な式行領域として扱い、その物質を増やしていくことで理論的には無限の広さの仮想式行領域が実現できたといいます。
現在では、その物質が何であるのかとか、具体的にどのようなメカニズムで実現していたのかとか、そういったことは一切不明です。
複合化式行結晶と仮想式行領域を組み合わせて、「大戦」当時には、一人で数百を越える編式を複数同時稼動できた魔術師も存在したという伝説もあります。
また、「大戦」当時の式行結晶などは、時代が古いにもかかわらず、基本的に現在のものよりも高度です。これは、生産技術や研究技術が「大戦」の被害により衰退した事によります。このため、「大戦」時代の呪文や式行結晶などは、現在の解析技術では解析不可能なものも少なくありません。