MAZDA ATENZA(GJ系) 試乗
2012年11月25日

試乗のステージ

時間が最後だったので、ご厚意でいろいろなステージで乗らせてもらいました。

試乗グレード

試乗者が普段乗っている車

何に普段乗っているかで試乗の印象が違うと思うので)

購入グレード

市街地

CX-5より低扁平のタイヤを履いていますが、市街地のステアリング応答の機敏性はCX-5(の19インチモデル)のほうが上に感じました。
アテンザのほうがゆったりした乗り味。
またマツダスピードアクセラと比べるとステアリングの反応は若干ダルく、手ごたえも軽いです。マツダ車のキビキビ感を期待すると違う感じ。
路面の荒れやわだちに対する落ち付きはCX-5より(もちろんマツダスピードアクセラより)もアテンザのほうが収まりがよく、巨大なボディと長いホイールベース、広いトレッド幅、よくリファインされたサスペンションの効果を実感します。
乗り心地もよくリファインされていて、これなら19インチでも良かったかなと思うほど。(私は17インチモデルの安い奴を購入)
(乗り心地は、私は普段乗っているのが大変硬い足周りのため、何に乗っても結構甘い評価です)
普通に乗っているとデカさをあまり感じないのですが、小回りが利かないのはやむを得ないところ。

長岡大橋(片側二車線の広く長い橋、信号がなく流れが速い)

流れに乗って走っている程度では回転数も低く静かです。ただ静粛性については普段何に乗っているかで評価が分かれそう。
特に高回転をよく使うスポーツタイプの車に乗っている場合、新型アテンザはディーゼルでもとても静かに感じるでしょう。
ロードノイズもなかなか抑えてあります。
もともと静かな車に乗っている人は、「こんなもんだよね」かも。(だから評論家の人は普段何に乗ってるか書くべきと思う)
運転の印象は直進性もしっかりしていて、まったく不安はありません。
あと、車線変更時の挙動が意図したとおりに正確で結構気持ちいいです。
街乗りと違い、道路の継ぎ目では19インチの大きさを感じます。(バタン、という感じで重そう)
ただ、バタンという感じも一発で収束するので、不快感が残ったりはしませんでした。

峠(よく道を知っている、車どおりが少ない峠)

ニュートラルから弱アンダーの安心感ある信頼できる挙動でした。行きたいラインをスイスイトレースできます。
(でもスポーツカーじゃないので、あくまでもファミリーカーとしては、というところです。たとえばRX-8と比較しちゃいけません)
街乗りではややダルいかなと感じたステアリングも、橋での車線変更や、峠道でのカーブではいい感じ。舵修正もほとんど不要でした。
FFらしくセンターコンソールのちょっと後くらいを中心にゆるりと旋回する感じ。
旋回の中心軸はかなりはっきりしていて判りやすく、舵修正がほぼ不要だったのはそのおかげかもしれません。
結構ロールさせるセッティングで、マツダスピードアクセラ比で体感で倍くらい傾いてる気がするのですが、圧倒的に広いトレッドのおかげか、ちゃんと曲がるし不安感もありませんでした。
昔ながらのマツダFFのギュッと踏ん張ってズバッと曲がっていく感じではなく、ロール挙動に逆らわずに傾きながらトラクションを確保してシュイーンと曲がっていく感じです。
横Gと速度のバランスが優しくて走りやすいです。
峠道を結構いいペースで走っても、ヤンチャ感があまりなく、落ち着いた挙動を保ちます。
数字上のサイズがバカデカイ割りに、普通に乗っていると峠でもそれほど大きい感じはしません。
が、スタビリティコントロールを切って振り回そうとすると、さすがに大きさと重さを感じます。──まあそんなことはしないで乗るのがよいと思います。

ディーゼルターボエンジン

音は「ディーゼルとは思えない」とよく書いてありますが…
ディーゼル音しないかなーと耳を澄まして乗っていると、試乗車はオーディオレスでセンターコンソールに穴が開いていたこともあり、小さく燃料噴射音のような音が聴き取れます。(チッチッチッチッ…という感じの音)
でもよく遮音・消音はされているようで、ディーゼルと聞いて連想するようなガラガラ音は全くしませんでした。
「言われなきゃディーゼルとは気がつかない」のはそうかもしれません。オーディオ鳴らしてると余計わからないでしょう。
タコメーターの針が真上を過ぎるくらいまで回しましたが、苦しげな様子もなく、普通に上まで回ります。
他社スポーツエンジン(ガソリン)のようなトップエンドの抜け感はないけど、実用エンジンとして普通に回り、イヤな感じはしません。
上り坂等で高負荷をかけて上まで回すとそれなりに音はしますが、ブォーンという力感ある音で、騒音とは感じませんでした。
しかし、ガソリンエンジンのほうがより静かなのは確かと思います。
日常使う領域の加速は強力で、とはいえマツダスピードアクセラ程ではないのですが、峠道の上りでも非力感は全くありませんでした。
広い道路での追い越し加速も余裕があります。
余裕を持ってゆったりと平静に加速しているのに加速度そのものは結構出ているという感じは大柄なボディサイズにお似合いです。

オートマチックトランスミッション

コストが安いオーソドックスなトルコン式の6ATながら、ロックアップ領域がとても広く、ATにしてはダイレクト感に富んでいます。
アクセルを開けた時、昔のATはエンジン回転数と車速の伸びにズレがあって気持ち悪かったのですが、それがかなり抑制されて、アクセルを踏んだとき、回転数・車速共に伸びていきます。
「いままでMT選んでいたのはトルコンすべりがイヤなのであって、クラッチを足で操作したいわけじゃない」という人にはうってつけ。
デュアルクラッチシステムほどではないと思いますが、オーソドックスな技術の集大成で、安価・軽量にこのフィールを実現していることは素晴らしいです。
シフトダウンもなかなか滑らかで、下り坂の減速時のシフトダウンもあまりストレスになりません。(でもMTでのヒールアンドトーのほうが滑らかかなあ…)
パドルシフトは試しませんでした。(普段6MT乗ってるのでつい手がシフトレバーにいきます)
エンジントルクが大きいので積極的に手動でギアを選ばなくても全く困らず、正直、下り坂の明示的なシフトダウン指示以外には、あえて手動シフトは使わないと思います。
(買って半年くらいは面白がって使うかもしれないけど、あとはDレンジ+明示エンブレくらいじゃないかなと思います…)

ブレーキ

効き自体や、ブレーキフィールに問題はなかったのですが、個人的に時系列のリニアリティが気になりました。
踏んだ分だけ減速力が立ちあがるということでは、踏力に対するリニアリティはしっかりしているのですが、減速時に踏力を一定に保って(いるつもりで)も、車速が落ちるに従って徐々に効きが強くなっていく感じ(減速Gが徐々に大きくなる感じ)がありました。
峠道や広い道での減速時は全く気になりませんが、信号停止等でいつ止まったかわからないくらいソフトに停まろうとすると、気になりました。
逆じゃないから怖くはないんですが、ATだからそう感じるのか、i-ELOOPなどの回生などがそうさせているのかは判りません。
あくまでもマツダスピードアクセラ比の個人の体感なので、試乗時に履いていた靴(ソールが厚いトレッキングシューズ)の問題、ドライビングポジションが実は不適切だったのか、実はアクセラのほうが経年劣化で減速Gが徐々に低くなっているのに慣れていて、アテンザのほうが一定だったのでそう感じたのかもしれません。

MTかATか

このクラスで6MTが設定される(しかもディーゼルエンジン)という、さすがマツダなチャレンジ。しかし私は今回はATを購入しました。
いままでの車歴が、5速MT・5速MT・4速AT・6速MTで、一度ATにした(MTの設定がない車種だった)んですがどうもフィールが合わずMTに戻した(というか今乗ってる車は6速MTの設定しかない)経緯があります。なのに今回はAT。
今回のATはロックアップ領域が広くMTと比べてもダイレクト感であまり劣らないこと(もちろん少しは劣ります)、日常が楽なことが大きな理由です。

以下、ずっとMT乗ってきててMTのデメリット的なことを。

今乗ってるMTは当時自分が憧れていた6段変速なのですが、大トルクのエンジンに6段のMTだと、正直街乗りだと忙しくて、ゆったり乗る気分の時にそぐわないのです。
MTでも1段飛ばしすればいいという人もいるかもしれませんが、すると駆動力が無くなるタイミングが長くなってしまい、滑らかな加速感が途切れてしまうのです。同乗者の頭が前後に揺さぶられます。
2速発進の場合も、ターボは過給圧が立ちあがらないアイドリング付近でのパーシャルスロットル時はトルクが案外細く、とても気を使います。

また、ターボエンジン+MTだと結構気になることですが、普通のシフトチェンジシーケンス、つまり「アクセルをオフにしてクラッチを切ってシフトチェンジしてエンジン回転合わせてクラッチを繋いでアクセルを踏む」だと、このアクセルオフの時間にターボの過給圧が低下してしまうのです。
シフトアップ時、ギアチェンジ後に回転を落としたいからアクセルをオフにするのですが、すると過給圧も落ちるのがつらいです。
エンジン回転を落として、しかし過給圧の低下を最低限にするには、シフトアップ時に半クラッチを用いて回転を一気に落としながらアクセルはある程度踏んだままにしておく、というような250ccオートバイでタイム稼ぐ時のような操作が必要です。(訓練しました)
ATなら踏みっぱなしでいいので過給圧は落ちにくいですし、駆動力も連続するので、シフトチェンジのたびに同乗者の頭が前後に揺れる、というようなことがおきにくいです。
MTの場合でも、峠など深く踏み込んでいるときは超楽しいし、シフトチェンジの際にも右足に気合を入れてアクセルを全閉せず過給圧を確保しつつ半クラ使って繋ぐので問題にならないのですが、街乗りでタラタラ走るとき、過給圧の低下によるギクシャク感を完全に解消して滑らかに走るには、忙しいシフト操作、繊細なクラッチワーク・アクセルワークをきっちりやりきる覚悟が必要です。
ただこれは訓練すれば大丈夫で、自分の手足で制御して上手に加減速がつながった時の気分のよさは、ATでは味わえない3ペダルMTならではの醍醐味です。(でも、なかなか普通の(ATに乗っている)人には判ってもらえない…)
こういった繊細な操作による小さな成功の連続は気合十分の時はとても楽しいのですが、買い物の足にする時や、街乗りの際には少々気合が足りずに面倒くさく感じることも私にはありました。
ATなら普段使いは楽で、しかも今回のATはダイレクト感が欲しいという希望に対して失うものが少なかったのでATにしてみました。

もう一つは、乗り心地面を心配したためで、新型アテンザはMTだと自動的に19インチタイヤになり、17インチはAT+ベースグレードしかなかったというのがありました。
が、購入後に試乗したけど19インチでも大丈夫だなという乗り心地リファイン具合でした。
あ、ベースグレードにしたのは乗り心地もあるけど経済的な事情が主です(苦笑)

あと、FFのMTは、ワイヤーリンクが伸びるのかどうかわからないのですが、経年劣化でシフトフィールが徐々に悪化していくようです。
私が今乗っているMT車も、購入当時のシフトフィールよりは、6年半・約6万キロ乗った状態の今のほうが、ややシフトの節度感は落ちています。
対策としてはワイヤーと、エンジンマウント等もヘタってる(シフトするときに揺れる?)のも影響しているとは思うので、これらを交換すればまたシャキっとしそうです。
経年劣化に関しては、ATもメンテ次第でシフトショックが大きくなったりタイミング遅延したりするので、一概にMTが不利とは思いません。
(複雑な分ATのほうがいざ壊れる・不調になると大変ですね)

このクラスのMT車を購入される人は、日本ではかなり少数派だとは思います。(ヨーロッパではディーゼル+6MTはむしろ定番だとか)
私は今回やや安楽指向になってATを選びましたが、MTをただ漫然と乗るんじゃなくて、きちんと訓練してスムーズに乗りこなせる人は、運転好きからみるとカッコいいと思っています。
ぜひご自身の手で自在に駆動力を操るカッコいいMTライフを送ってください。


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